健康デザイン研究所 > マインドフルネスについて
マインドフルネスとは
マインドフルネスとは、「今この瞬間、自分が経験していることに対して、一切の判断をせず、ただ意識している心の状態のこと」です。
1993年から禅をはじめとする様々な瞑想法や、そのベースとなるインド哲学を研究・指導している綿本彰氏によると、マインドフルネスとは、サティ(sati)=「心にとめておく」という意味を持つパーリー語(古代インド語の一つ)の英訳で、本来はメソッドではなく、瞑想や呼吸法などを通して得られる、上のような心の状態を表す言葉だといいます。
私たちの心は普段、未来に向かってワクワクしたり、逆に不安になったり、過去のことを思い出して落ち込んだり、あるいは特定の考えに囚われて苦しくなったり、なかなか「今この瞬間」に留まることがありません。
また、留まったとしても、それが好きなものであれば固執したり、嫌なものであれば拒絶したりして、常に何かに囚われて煩ってばかりいます。
そういったことが一切なく、ただ受け取った刺激を純粋に意識したり、心に湧き起こった印象をありのまま感じたりするだけのシンプルな心の状態。
それがマインドフルネスと呼ばれる、今この瞬間をただ感じている状態なのです。
マインドフルネスの効果
様々な瞑想などを通して「マインドフルネス」に至る効果は、大きく分けると以下の三つに分類されます。1.心を整える効果
様々な煩わしさから切り離された心の状態がマインドフルネスなので、そこに至るトレーニングをすることで、心を整える様々な効果がが得られることが分かっています。
とりわけ顕著なのが「心の不調」を解消する効果、つまり心をマイナスからゼロに調整する効果です。
不安や怒り、落ち込みを緩和して気持ちや情緒を安定させ、ストレスを緩和し、自己肯定力や自己受容力を高め、うつや無気力を和らげる効果があるといわれています。
また「心の快適さ」を高める効果、 つまり心をゼロからプラスに調整してくれるのも、マインドフルネスの大きな特徴です。
思いやりや共感力、EQを高め、幸福感を向上させるなど、精神的なコンディションを高めることにも効果的であることが、近年の多くの研究結果から確認することができます。
2.身体を整える効果
心への効果ばかりが注目されるマインドフルネスですが、身体に対する効果も数多く報告されています。
その多くは、リラックスによる自律神経調整効果で、それに関係する様々な身体機能が調整されていく効果です。
マインドフルネスの第一人者であるジョン・カバット・ジン博士の代表著書である『マインドフルネス ストレス低減法』によると、血圧調整、睡眠障害の改善、様々な痛みの緩和、内臓不調の改善などが紹介されていて、この他にもオハイオ大学の研究によると、炎症を抑える効果が見られたとの発表もあり、マインドフルネスによる身体的な効果も今後さらに期待されています。
3.能力を向上させる効果
心のマイナス要素が減り、プラス要素が増すので当然なのですが、マインドフルネスによる能力向上効果も数多く報告されています。
集中力や記憶力、処理スピードが向上することは有名ですが、他にも緊急事態に落ち着いて対処する力や、論理的に物事を理解する力、相手の気持ちに共感しながら聴く力、チーム全体に貢献しようとする力、自分の能力を過少も過大もせずに捉える力など、仕事を行う上で必要となる、様々な能力を向上させる効果があるといわれています。
こういった様々な効果が注目され、いま世界中で多くの企業や学校などにマインドフルネストレーニングが取り入れられ、さらなる効果やメソッドの開発が行われています。
マインドフルネスの秘策
上で紹介したように、すでに様々な効果が報告されているマインドフルネスですが、そんな従来のアプローチに加えて「デザイニング」の発想をプラスすることで、より効果的にマインドフルネスの実践が可能になることは、まだあまり知られていません。
従来の多くのアプローチのように、例えば自然な呼吸を促しながら「ただ呼吸を感じましょう」と提案することは、ある程度落ち着きのある方に対しては有効なのですが、それ以外の方に関しては、ついつい他のことを考えたり、感じた後につい制御したり拒絶したりしてしまう人も実は少なくありません。
だからこそ「練習」が必要になるのですが、その際に「デザイニング」の発想を取り入れて、そこに至るプロセスを工夫(デザイン)することで、とても自然に「ただ呼吸を感じる」状態を引き出すことが可能になるのです。
そのことを、長い歴史の中で提案し続けてきたのが「ヨガ」です。
ヨガとは、瞑想やマインドフルネスの状態を、自然な形で引き出すよう緻密に設計されたデザインメソッドなのです。
だからマインドフルネスで用いられるテクニックのほとんどが、実はヨガのテクニックだったりするわけなのですが、ところが実は、マインドフルネスで利用されているほとんどのテクニックが、ヨガシステムの「仕上げ段階」のメソッドばかりで、そこに至るまでの「仕込み段階」のメソッドが省略されていることが一般的です。
心をマインドフルネスへと導く身体作り(Doing)をしたり、心を特定の対象に引き寄せ(Doing)たり、呼吸のコントロール(Doing)を通して大らかな心を育んだり…
こういったDoingによる「仕込み段階」を丁寧に行うことで、より自然な形でBeingが引き出されていく。
このバランスこそが、マインドフルネスの効果を最大限に引き出していく上で、最も大切なことであると私たちは考えています。